リリィ

あまりにも辛気の毛が強過ぎて書く方もつらくなった。最近ハマってることについて書こうと思う。

リリイ・シュシュのすべて』(2001)は日本の映画監督岩井俊二氏の映画で、2001年に公開された。

内容は思春期の人間関係や、時期特有の雰囲気というか、こういうことを書くのが苦手だな、

実はハマっているのは映画の方ではなくて、「リリイ・シュシュ」だ。

映画内では架空のアーティスト「リリイ・シュシュ」が登場する。デビュー時のSalyuが演じているのだが、実際に曲があり、ミニアルバム『呼吸』も映画公開同時期に発売された。

映画内の登場人物は、このリリイ・シュシュというアーティストを熱狂的に(そこまで狂っているような描写はされていないが)支持しており、いじめや、辛い現実から救い出してくれるこの歌姫を崇拝している。掲示板も立ち上げ、『リリイホリック』と名付けられたその場所では、リリイを愛する者が匿名で書き込みをしている。この掲示板は現実世界でも存在しており、映画公開前からこのプロジェクトが掲示板を通して進行していたらしい。私はそれ以前のことをなにも知らないので詳しく言及することはできない。

岩井俊二氏の作品を全て見たわけではないが、2004年公開の「花とアリス」は私の好きな映画に入るほど、お気に入りの作品だ。他にも「リップヴァンウィンクルの花嫁」(2016)など。

リリイ・シュシュのすべて」や「リップヴァンウィンクルの花嫁」などは正直、映画としてはあまり好みではなかった。

ただ彼の世界観が好きだ。彼の目を通して見ている世界が好きだ。

そして、彼が生み出した「リリィ・シュシュ」という歌姫は、私の心を捉えた。

岩井俊二氏の映画は不思議だ。ふと何気ない時に、思い出す事がある。「リリイ・シュシュのすべて」も、ここ最近になって、ふと思い出したのだった。

 

彼女の歌声は、私の歌う声と共鳴した。歌を歌うために歌を聴いて、歌を歌う事で私は救われた。力強いのでもない。かといってか弱いわけでもない。映画で蒼井優演じる津田詩織が、映画終盤で飛ばして遊んでいたカイトのように、宙を舞うような、そんな歌声だ。

スピリチュアルポップと形容される彼女の歌は、まさに魂の奥深くに染み入るようで、バラバラになった心を繋ぎ止めてくれる。

こんなにも複雑な心の動きを、詞という言葉に込めて歌い上げてしまうなんて。本当に魔法だ。

私の言葉では、私の思っていることや考えていることのほんの少しでも形にする事ができない。わかるだろう。もっともっと、歌を聴いた時に起きる情動は、こんなものではなくて、言葉にできない、感覚なんだ。そしてもっと特別で、大事なものだ。なににも変え難い。愛しているんだ。

私も、これぐらい心を、思考を、形にする事ができたならきっと、もっと生きたいと思えるのだろう。錆び付いてしまった情動を動かしてくれるのは、きっと。

ここにいるのは窮屈で、辛い。

音楽があればこそ、